最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明
2019年07月12日
少し前になりますが、佐賀県弁護士会では、
「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」を
公表しています。
ワーキングプア問題の解消に重要な最低賃金について
議論が深まるきっかけになればと思います。
―――
最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明
1 佐賀地方最低賃金審議会は,2018年(平成30年)8月8日,佐賀県の
最低賃金額を25円引き上げて時間額762円とする旨の答申を行った。
この答申を受け,佐賀県労働局長は,同年10月4日から最低賃金額を762円に
改正することを決定した。
この引上げは,中央最低賃金審議会が示した引上げの目安を上回り,
佐賀県における引上げ額としては過去最大のものであり,
佐賀県内におけるワーキングプアの救済や,貧困問題の解消に資するものと
評価することができる。
2 しかしながら,佐賀県における最低賃金額762円という水準は,全国で最
も安価な水準から脱したものの,未だ2番目に安価というものにすぎず,
労働者が1か月173時間(法定労働時間週40時間とした場合の月労働時間)
稼働しても,賃金額は月収13万1826円,年収158万1912円にしかならない。
現在の最低賃金額水準でも,いわゆるワーキングプアのラインとされ
る年収約200万円に遠く及ばない。
くわえて,平成29年版厚生労働白書によれば,相対的貧困率(等価可処分
所得が全人口の中央値の半分未満の者の率)は,全体として15.6%であって,
ひとり親世帯ではいまだに50%を超えているほか,子どもの貧困率は13.9%
と高い水準である。
わが国では少子化が加速進行しており,今年の出生数は85万人程度とも予想
されている。
まさに危機的というべき事態に陥っており,少子化対策のためにあらゆる施策を
とらねばならないという観点からも,最低賃金額の大幅な引上げによる労働者の
生活水準底上げが緊急に必要である。
働いていながら貧困状態にある者の多くは,最低賃金額付近での労働を余儀
なくされている。最低賃金額が安価な水準となっていることが,深刻化してい
る貧困問題に直結している。
3 また,昨年度全国加重平均は874円であるところ,佐賀県における最低賃
金額はこれを112円下回り,その差は一昨年度よりも拡大している。
最低賃金が地域ごとに定められる根拠の一つに,居住地域によって生計費が
異なることがあげられる。
しかしながら,最低生計費に地域間格差がないという調査結果
(中澤秀一静岡県立大学短期大学部准教授2015年~2016年調査)も
発表されており,すでに根拠となりえないことが明らかとなっている。
労働人口の都市部への流出を防ぎ,地方の活性化をするためにも,最低賃金
額を大幅に引き上げて都市部と地方部の賃金格差を解消すべきである。
4 政府は最低賃金額の全国加重平均を1000円とすることを目標としている。
この水準が達せられても,1か月173時間労働では,未だワーキングプ
アの水準とほぼ変わらない収入しか実現できず,不十分な水準ではある。
また,上記のとおり,地域の最低生計費に差異が無い以上,全国加重平均で
はなく,全地域において,最低賃金額1000円を速やかに実現し,さらに,
真に労働者の生活の安定を確保し,貧困問題及び少子化問題を解消できる
水準まで最低賃金額の大幅な引上げを行うべきである。
5 本年においても,中央最低賃金審議会及び佐賀地方最低賃金審議会において
審議が予定されている。当会は,昨年にもまして最低賃金額の大幅な引上げを
求める。
2019年(令和元年)6月15日
佐賀県弁護士会
会長 奥 田 律 雄
「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」を
公表しています。
ワーキングプア問題の解消に重要な最低賃金について
議論が深まるきっかけになればと思います。
―――
最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明
1 佐賀地方最低賃金審議会は,2018年(平成30年)8月8日,佐賀県の
最低賃金額を25円引き上げて時間額762円とする旨の答申を行った。
この答申を受け,佐賀県労働局長は,同年10月4日から最低賃金額を762円に
改正することを決定した。
この引上げは,中央最低賃金審議会が示した引上げの目安を上回り,
佐賀県における引上げ額としては過去最大のものであり,
佐賀県内におけるワーキングプアの救済や,貧困問題の解消に資するものと
評価することができる。
2 しかしながら,佐賀県における最低賃金額762円という水準は,全国で最
も安価な水準から脱したものの,未だ2番目に安価というものにすぎず,
労働者が1か月173時間(法定労働時間週40時間とした場合の月労働時間)
稼働しても,賃金額は月収13万1826円,年収158万1912円にしかならない。
現在の最低賃金額水準でも,いわゆるワーキングプアのラインとされ
る年収約200万円に遠く及ばない。
くわえて,平成29年版厚生労働白書によれば,相対的貧困率(等価可処分
所得が全人口の中央値の半分未満の者の率)は,全体として15.6%であって,
ひとり親世帯ではいまだに50%を超えているほか,子どもの貧困率は13.9%
と高い水準である。
わが国では少子化が加速進行しており,今年の出生数は85万人程度とも予想
されている。
まさに危機的というべき事態に陥っており,少子化対策のためにあらゆる施策を
とらねばならないという観点からも,最低賃金額の大幅な引上げによる労働者の
生活水準底上げが緊急に必要である。
働いていながら貧困状態にある者の多くは,最低賃金額付近での労働を余儀
なくされている。最低賃金額が安価な水準となっていることが,深刻化してい
る貧困問題に直結している。
3 また,昨年度全国加重平均は874円であるところ,佐賀県における最低賃
金額はこれを112円下回り,その差は一昨年度よりも拡大している。
最低賃金が地域ごとに定められる根拠の一つに,居住地域によって生計費が
異なることがあげられる。
しかしながら,最低生計費に地域間格差がないという調査結果
(中澤秀一静岡県立大学短期大学部准教授2015年~2016年調査)も
発表されており,すでに根拠となりえないことが明らかとなっている。
労働人口の都市部への流出を防ぎ,地方の活性化をするためにも,最低賃金
額を大幅に引き上げて都市部と地方部の賃金格差を解消すべきである。
4 政府は最低賃金額の全国加重平均を1000円とすることを目標としている。
この水準が達せられても,1か月173時間労働では,未だワーキングプ
アの水準とほぼ変わらない収入しか実現できず,不十分な水準ではある。
また,上記のとおり,地域の最低生計費に差異が無い以上,全国加重平均で
はなく,全地域において,最低賃金額1000円を速やかに実現し,さらに,
真に労働者の生活の安定を確保し,貧困問題及び少子化問題を解消できる
水準まで最低賃金額の大幅な引上げを行うべきである。
5 本年においても,中央最低賃金審議会及び佐賀地方最低賃金審議会において
審議が予定されている。当会は,昨年にもまして最低賃金額の大幅な引上げを
求める。
2019年(令和元年)6月15日
佐賀県弁護士会
会長 奥 田 律 雄
Posted by わかくす法律事務所 at 23:36
│貧困対策